生後2か月から受ける公費の予防接種が、令和6年4月1日から四種混合とヒブは五種混合へ、肺炎球菌は13価から15価へそれぞれ変更となります。生後2か月から受ける公費の予防接種は五種混合、肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルスワクチンとなります。
おたふくかぜの一番恐ろしい合併症は、『難聴』です。
先日、おたふくかぜによる難聴患者が年間300人以上いるというデータが提示されました。そして、その半数が小児という結果が出ました。
先進国で、おたふくかぜワクチンが定期接種となっていない国は、日本のみです。
おたふくかぜは、ムンプスウイルスにより引き起こされる感染症で、耳の下にある耳下腺が腫れる病気です。注意点は、様々な合併症を起こす事です。髄膜炎が最も重要で、これ自体は軽症で済みますが、その後、難聴を起こす事が分かっています。
おたふくかぜによる髄膜炎で亡くなる事はまずないのですが、難聴は生涯続きますので子供の一生を左右する病気です。いつ定期接種になるのかは不明ですので、任意で構わないので是非接種すべきです。
ちなみに、日本のおたふくかぜワクチンの接種率は、残念ながら、約3割程度です。
保育園など集団生活をするのであれば、必ず接種すべきワクチンです。1回接種では、抗体が不十分ですので、約3~5年あけて、2回接種を行いましょう。
定期接種では4種混合ワクチンとして4回接種していますが、海外では就学前(4-6歳)に5回目のポリオ単独接種が定期接種として行われています。
不活化ポリオワクチンは、他のワクチンと同様、接種から時間が経つと抗体価(感染を予防する力)が低下します。抗体価が低下すると、ポリオ感染を予防する力が失われ、再び感染のリスクにさらされます。より長い間ポリオ感染を予防するためには、追加接種が必要です。
ポリオはポリオウイルスによる急性のウイルス感染症です。小児患者が多いため、小児麻痺とも呼ばれています。ポリオウイルスに感染しても、多くの場合目立った症状は現れませんが、稀に四肢に麻痺が現れ、その麻痺が一生残ってしまったり、重症の場合は死亡する事があります。
ポリオには有効な治療法がありません。
麻痺に対して、残された機能を最大限活用するためのリハビリが行われる程度です。
明確な治療法はありませんが、ワクチン接種によりポリオの発症が予防できる事は分かっています。そのためワクチンの追加接種が推奨されます。
このワクチンは子供から大人まで全ての年齢で接種しなければいけないワクチンです。
B型肝炎のキャリア(知らずにウィルスを持っている人)は国内に100万人以上いるとされてます。
B型肝炎は感染してから発症するまで数十年かかるため、キャリアという表現が使われます。
単純に考えて100人に1人は知らないうちにウィルスを持っているという計算になります。
B型肝炎ウィルスの感染力は非常に強いです。以前は母子感染や針刺し事故などの血液感染しか知られていませんでしたが、最近の報告では、唾液や涙でも感染することが分かってきてます。
消毒したつもりでも付着している超微量なウィルスでも感染してしまうわけです。
唾液や涙を介して保育園内で集団感染したという事例もあります。
身の回りに意外にキャリアが多い事、感染力の強さ、そして感染しても気付かずに他の人に感染させてしまっているかもしれない、発症するのは数十年後と、非常に厄介なウィルスがB型肝炎です。
乳児だけでなく大人もいつどのタイミングで感染させられるか分からないため、全ての年齢でワクチンの接種が必要です。今回の助成対象外のお子さんも早急に接種して貰いたいワクチンです。
日本の赤ちゃんが1歳前に接種する主なワクチンは6~7種類。何回か接種するワクチンもあり、接種回数は15回以上にもなります。また生ワクチン接種後は、4週間あけなければ次のワクチンが接種できません。そこで、有効なのが同時接種です。同時接種は必要な免疫をできるだけ早くつけて子どもを守るだけでなく、保護者の通院回数を減らすことができます。世界中の小児科医が同時接種をお奨めしているのは、予防接種スケジュールが簡単になり、接種忘れなどがなくなる(接種率があがる)だけでなく、予防という本来の目的を果たす意味で非常に重要だからなのです。
1.同時接種とはなんですか?
2種類以上のワクチンを1回の通院で接種することです。効果や安全性は単独で接種したときと変わりません。
2.なぜ、同時接種をすすめているのですか?
小さな子どもは免疫が弱く子どもがかかる感染症には重い病気が多くあります。かかってしまうと、最新の医学でも良い治療法のない病気もいまだにあります。ここ最近、ありがたいことに日本で接種できる新しいワクチンが増え、ワクチンで防げる病気(VPD)が増えました。ヒブ、小児用肺炎球菌、ロタウイルス、四種混合(DPT-IPV)、三種混合(DPT)ワクチンのような0歳の早い時期に接種するワクチンは、2~3回接種しないと確実な免疫ができません。ワクチンを1種類ずつ接種していては、免疫ができるまでにたいへん時間がかかります。でも病気は待ってくれませんし、毎週接種に通うのは保護者の方やお子さんにとって大変な負担です。安全性も単独接種と変わらないので、ワクチンの効果を最大限に発揮させるため世界中で同時接種が行われているのです。
3.1種類ずつ接種するのでは、いけませんか?
当然ながら保護者の方が希望すれば、1種類ずつ接種することもできます。しかし、1種類ずつ接種していては、ワクチン本来の目的であるVPDの予防が確実にはできなくなってしまいます。ヒブや肺炎球菌による細菌性髄膜炎や百日せきのように乳児期早期からでも発症を防がなければならないVPDについては、確実な免疫をつけるのに時間がかかってしまう1種類ずつの接種はむしろ危険です。また、ロタウイルスワクチンは腸重積発症との関係で初回接種と接種完了の月齢が厳しく規定されています。この時期に接種するワクチンはどれも優先的に受けたいワクチンですので、同時接種でなければ受けることがたいへん難しくなります。こういうことも含めて、0歳に限らずどの年齢でも可能であれば同時接種をすすめています。
4.同時接種のデメリットを教えてください。
同時接種のデメリットはありません。世界中のあらゆる人種や民族の子ども達に対して、10年以上前から行われていますが、何も問題は起こっていません。1回の受診で注射の本数が増えますので、保護者の方々にとっては辛いと感じられることがあるようです。しかし、単独接種であっても受ける注射の回数は結局同じですから、デメリットではありません。接種部位が腫れたり赤くなったりするなどの局所反応や発熱などが増えるのではと心配されることもありますが、トータルでは1種類ずつ接種するのと同じです。痛みに関しては、子どもの泣き方を見ていても1本だけ接種した場合と、5~6本接種した場合でも、大差はありません。そのために、自分の子どもに同時接種を受けさせたことのあるほとんどの保護者の方は次回に同時接種を希望されます。
5.同時接種と混合ワクチンの違いはなんですか?
同時接種は、単独のワクチンを約2.5cm以上離れた場所に1本ずつ接種するものです。混合ワクチンは、数種類のワクチンがはじめから1本の注射液に含まれているものなので、広い意味の同時接種です。日本では百日せき、破傷風、ジフテリア・ポリオの四種混合(DPT-IPV)、麻しん、風しんのMRワクチンなどが混合ワクチンです。早期に免疫をつけるだけなら同時接種でも同じですが、混合ワクチンは注射の回数を減らして子どもたちの負担を少なくするために、世界中で研究を重ねて開発されてきました。日本でも混合ワクチンに切り替わっていくのが望ましいのですが、別々のワクチンを接種するときに混ぜてはいけないので、今のところは同時接種で行うしかありません。
6.1日のうち間隔をあけて2回の予防接種をするのは違いますか?
例えば集団接種の会場で、BCGのワクチン接種を受けて、その足でかかりつけの先生のところに行って、ヒブワクチンなどを受けることを同日接種と言います。これの是非に関しては専門家によって意見が異なりますが、少なくとも現在行われているヒブや小児用肺炎球菌ワクチン接種の際の公費助成制度のもとでは、行ってはいけないことになっています。一部の地域で行われているようにBCGを集団接種でなく、かかりつけの先生での個別接種にすれば解決されますが、このためには医師会などその地域全体を変更する必要がありますので、難しいことが多いのです。ただし、保護者の方々が市区町村や医師会に要望すれば実現の可能性はあります。
7.小さな赤ちゃんのからだ(免疫機能)に負担はかかりませんか?
これは世界中で心配されました。子どもの免疫の力はまだ強くありませんが、10本のワクチンを同時接種しても子どもにかかる負担はほんのわずかで、持っている免疫力全体の0.1%くらいしか使用しません。そして実際問題として、長い間世界中で使用されて問題が起こってないことが最大の証拠(エビデンス)です。
8.同時接種にすると、ワクチンの効果は減りませんか?同時接種で副反応が出やすくなったり、同時接種特有の副反応がでたりすることはありませんか?
同時接種によってワクチンの効果が減ることはありません。また混合ワクチンでは効果が減らないように工夫されています。副反応が出やすくなったり、特別な副反応が出たりすることもありません。
9.子どもの体質などで同時接種をしないほうがいい場合はありますか?
ありません。逆に重い病気を持っている子どもの場合は、VPDにかかれば重症になりやすいですし、接種のために何度も来院するのが大変なので、世界中で同時接種が強く勧められています。
10.万が一、同時接種で重大な副反応がおこったらどうしたらよいですか?
接種後になんらかの症状や病気が見られた場合、これを有害事象と呼びます。有害事象には、ワクチンによるものと、ワクチンによらないもの(ワクチンとは無関係なことがたまたま起こっただけ)があります。医学的には有害事象のほとんどがワクチンと無関係であることがわかっています。このようにワクチンによる重大な副反応が起こる確率は極めて低いのです。
たとえ起こっても、ほとんどの場合、どのワクチンによるものか区別できません。しかし、ワクチンによる健康被害救済制度では、どのワクチンによるものかは問題にしないで救済対象としてくれることになっています。安心して同時接種を受けてください。
11.万が一、定期接種のワクチンと任意接種のワクチンで重大な副反応がおこったら、どうなりますか?
接種後にワクチンが原因で重大な副反応が起こる確率は極めて低いのですが、万一、起こってしまった場合、定期接種ワクチンは任意接種ワクチンよりも補償制度が手厚くなっています。同時接種の場合には、原則として定期接種の救済制度が適用されます。これは、どちらのワクチンが原因であるかがわからないためです。このように補償制度の面から考えますと、任意接種ワクチンを定期接種ワクチンと同時接種で受けることは、万一のときの安心につながるのです。
12.「海外で使っているから日本でも安全」と考えてよいのでしょうか?
薬の場合は、民族差が少し問題になることはあります。しかしワクチンの場合は、世界中で、日本人、日系人、アジア系の子どもも同時接種を含めて受けていますが、ワクチンの常識として、安全性と効果に基本的な差はありません。日本でも、世界中で実際に行われていることを自然に受け入れてほしいですね。
13.同時接種の組み合わせで悪いものや本数の制限はありますか?
組み合わせや本数に制限はありません。まず組み合わせでは、生ワクチン同士でも、不活化ワクチン同士でも、生ワクチンと不活化ワクチンとの組み合わせでも、接種年齢になっていれば可能です。また、定期接種ワクチン同士でも、任意接種ワクチン同士でも、また定期接種ワクチンと任意接種ワクチンの接種も可能です。当然、飲む生ワクチンと注射のワクチン(不活化でも、生ワクチンでも)との組み合わせも問題ありません。接種の本数に関しても、接種年齢になっていれば、制限はありません。欧米では生後2か月では6本のワクチンが同時接種されています。米国では、1歳の時に、インフルエンザワクチンまで含めて最大9種類のワクチンが同時に接種されることもあります。
14.ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの同時接種は安全ですか?
この2つのワクチンの組み合わせの同時接種は、世界ではごく一般的に行われています。これまでの世界中で行われてきた数多くの経験からも安全と言えます。
15.同時接種ができないワクチンの組み合わせはありますか?
(1)定期接種のワクチンと任意接種のワクチン、(2)不活化ワクチンと生ワクチン、(3)生ワクチンと生ワクチン、(4)注射と飲むタイプのワクチン(1)~(4)の全ての組み合わせでも、安全に同時接種ができます。
16.同時接種の場合、次のワクチン接種との間隔はどうなりますか?
同時に受けたワクチンに生ワクチンが含まれていれば4週間後の同じ曜日から、不活化ワクチンだけなら1週間後の同じ曜日から次の接種ができます。例えば、ヒブと小児用肺炎球菌ワクチンという不活化ワクチンのみの同時接種なら1週間後から他のワクチンを接種できますが、生ワクチンのMR(麻しん風しん混合)と不活化ワクチンの小児用肺炎球菌ワクチンの同時接種なら次の接種まで4週間あける必要があります。また、同じワクチン同士では接種間隔がそれぞれ決まっています(四種混合やヒブワクチンでは最短3週間、小児用肺炎球菌ワクチンでは最短で4週間など)ので、かかりつけの小児科医とよく相談してください。
17.同時接種は、どの医療機関でもできますか?また、かかりつけ医が同時接種に応じてくれません。どうしたらよいですか?
残念ながら、日本だけが同時接種の習慣がなかったので、絶対に私は行わないという医師もいます。また、2011年の接種後の死亡事例では、最終的にワクチンとは一切無関係のことが分かったのですが、このことを知らない医師もいます。保護者の方に説明するのが大変だからという理由でしない医師もいます。そのほかにも理由があるかも知れませんが、これは困ったことです。対応としては、同時接種をしている医師を探すしかありません。同時接種をしない医師を責めるのは簡単ですが、基本的にはこれも厚生労働省の「子どもをVPDから守ろう」の姿勢がはっきりしないからです。
おたふくかぜ患者は3~4歳が最も多く、2~9歳が好発年齢であり、毎年数万~数十万人の患者が報告されています。
おたふくかぜワクチンは任意接種でお金がかかるため、接種率は低く、おたふくかぜ患者の発生を抑えられません。おたふくかぜはその合併症として、無菌性髄膜炎がよく知られていますが、予後はそれほど悪くないとはいえ、お子さまにかなり苦しい思いをさせ、脳波異常が残る可能性があることも指摘されています。
また、約0.1%、1000人に1人という頻度ですが、難聴という合併症が生じます。感音性難聴でほとんどは片則性ですが、両側のこともあり、治癒しないのでかなり深刻です。
成人の睾丸炎は無精子症を起こすことがあり、不妊症の原因になります。
上記の理由でワクチンを是非受けておいて下さい。
日本小児科学会ではおたふくかぜワクチンは2回接種を推奨しており、MR(麻疹、風疹)ワクチンと同じ頃に2回目を接種するのが良いと思われます。
1回目を1歳から接種し、2回目を4~6歳頃接種するのが良いと思います。
MMRという麻疹と風疹、おたふくかぜの三種混合ワクチンが接種されていたとき、おたふくかぜワクチンの副作用として無菌性髄膜炎がかなりの頻度で発生したため、MMRワクチンは中止になりました。副作用のない安全なワクチンが待ち望まれていますが、現在の単独おたふくかぜワクチンは無菌性髄膜炎を起こす頻度は非常に低いものです。